一般的に認知度の高い通所介護(デイサービス)という介護サービスがありますが、中には「認知症対応型通所介護」という、認知症の利用者を対象に専門的なケアを提供することができる介護サービスもあります。サービス名のとおり、これは医師によって認知症と診断された要介護または要支援の認定がある方が受けることのできるサービスとなっています(要支援の場合は介護予防認知症対応型通所介護といいます)。認知症とは、アルツハイマー病や脳血管疾患によって物忘れや認知機能の低下が起こり、日常生活に支障をきたしている状態のことをいいます。認知症の原因となる疾患が急性のものである場合はサービスを受けられる対象に含まれません。

認知症型通所介護で受けられるサービス

認知症対応型通所介護では、一般的な通所介護のように自宅と施設間の送迎、入浴・排泄・食事の介護、機能訓練(リハビリテーション)、健康管理などに加えて認知症の方に合った専門的なサービスを受けることができます(回想法や音楽療法など)。また、事業所の管理者は認知症対応型サービス事業管理者研修を修了していることが義務付けられているので、より認知症介護に相応しい配慮がなされるという安心感があります。

デイサービスとの違い

一般的な通所介護と認知症対応型通所介護との違いとして特徴的なのは、介護職員一人あたりの利用者の定員基準です。通常、通所介護ではこのような定員基準がないのに対し、認知症対応型通所介護では定員が12人以下と定められています。このように人員配置の割合が高いということは、その分各利用者への介護がより手厚くなるというメリットがあります。また、認知症対応型通所介護は2006年4月に介護保険制度の改正によって、地域密着型サービスの一つとなりました。地域密着型サービスとは、可能な限り住み慣れた自宅や地域での生活を継続できるようにするためのサービス体型で、事業所のある市区町村が指定や指導監査を行います。そのため、一般的な通所介護では事業所と利用者の合意があれば他地区の施設でも利用可能となっていますが、認知症対応型通所介護では利用者は原則事業所のある市区町村の住民に限られます(市区町村によっては他地区の利用を認めている場合もあります)。

施設の形態

施設の形態としては3つの類型に分けられます。認知症対応型通所介護施設として単独で設置されている「単独型」、介護老人保健施設や特別養護老人ホームなど他の福祉施設と併設されている「併設型」、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)などの施設の一部を使用して提供される「共用型」です。

認知症を発症すると、時間や場所の認知、また一度に複数のことを行うことが困難になってしまうなど行動面での変化や、うつ状態、暴力的になるなど心理面での変化など、人によって様々な変化を起こします。どの介護サービスにもいえることですが、利用者の状態や施設のサービス・環境、家族の負担などを考え、個々人にあったものを選ぶことでより効果的な心身機能の維持・回復を目指すことが望まれます。