平均寿命の延伸とともに浸透しているのが、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されている“健康寿命”。今日、「長く生きる」ことよりも重視されており、いかにこの健康寿命を延伸するかに関心が高まっています。

シニア層の9割が日頃から「健康にとても気を遣っている」とのことですが、それでは実際にシニアの方々が日頃から意識し、実行している健康法にはどのようなものがあるのでしょうか。

やはり上位に並ぶのは「適度な運動」「規則正しい生活」「バランスのとれた食事」。年齢を重ねると体力の衰えや疲労感に悩む方が多いので、無理のない適度な運動で体力を保ちつつも、睡眠をしっかりとることで疲労を残さない、という行動は大半の方が意識しているようです。また、バランスのとれた食事でしっかりと栄養を賄うこと。「塩分や糖分を摂りすぎない」「高血圧対策にカリウム」「筋肉の衰えにはたんぱく質」等々、身体の状態に合わせて病気の予防や健康維持に努めているようです。

さて、これらの行動意識はもちろん非常に大切で一般的に知られていますが、このような身体的な行動だけではなく、精神面に重きを置いた行動が身体の健康に影響を及ぼすことも科学的に実証されています。

例えば、「たくさん笑うこと」。

では、笑うことでどのような健康面に影響があるのでしょうか。

代表的なものとして、笑うことでがん細胞や体内に侵入するウイルスなど、身体に悪影響を及ぼす物質を退治しているナチュラルキラー(NK)細胞を活性化させ、がんや感染症にかかりにくくなるということが実証されています。つまり、NK細胞の活性化によって、身体に悪影響を及ぼす物質が次々と攻撃されるので免疫力が高まります。

対して、マイナスの感情はNK細胞の働きを鈍くさせ、免疫力も落ちてしまうのです。

笑うことによる効果はこれだけではありません。

他にも健康に対してさまざまなプラスの効果を発揮します。

①自律神経のバランスが整う

自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、それぞれ緊張しているときとリラックスしているときに活性化するものです。この2つのバランスが崩れている状態が、よく耳にする「自律神経が乱れている」という状態です。通常、起きているときは交感神経が優位となりますが、笑うことで副交感神経が活性化するので、自律神経のバランスが整ってくれます。

②脳の働きを活発にする

笑うことで新しいことを学習する際に働く脳の海馬の容量が増え、記憶力がアップするといわれています。さらに、脳波のアルファ波が増えて脳がリラックスする、大脳新皮質に流れる血液量が増加し、脳の働きが活発になるともいわれています。

③幸福感や鎮静作用をもたらす

幸福感をもたらす物質である、エンドルフィンという脳内ホルモンが分泌されます。また、エンドルフィンは陶酔感や恍惚感の要因ともいわれており、モルヒネの数倍もの鎮静作用があります。

このように、「笑うこと」が健康へ及ぼす影響は数多くあります。しかし、意識して笑うことや、一人でテレビを見るなどしてたくさん笑うことでは限界があるかもしれません。食事や睡眠など規則正しい生活を心がけながら適度な運動のため外へ足を運び、人とたくさん話し、たくさん笑うということが、一つシニアの方の健康のコツとなるのではないでしょうか。