訪問看護の現場看護師と山内豊明教授(名古屋大学大学院)が『訪問看護アセスメント・プロトコル』(中央法規出版)を完全搭載したアセスメント・業務支援システム「看護のアイちゃん」にはアセスメントフローチャートが、全体で15 種類あり、『循環』のアセスメントの最初の設問が「呼吸は苦しくないですか?」になります。
なぜ呼吸から始まるのかを考えてみましょう。
「循環」でこまるもの
人間は、見た目が変わらないようでも、身体の中身は昨日と同じではありません。生命体は絶えず細胞の再生と水分の入れ替えを行っているからです。この細胞の再生には、「栄養」「熱」「酸素」が不可欠ですが、リアルタイムで供給されないと困るもの(急いで観察をする必要があるもの)とは、いったいなんでしょうか?
「栄養」について
「栄養」は空腹になっても、食べ続けなければ足りないというものではありませんし、そもそも自身が望まなくても体に栄養を溜めこむ仕組みが備わっていますので時間的にゆとりがあります。
「熱」について
体温の半分は食べ物を分解したときの熱で、あとは筋肉を動かしてできるエネルギーの余熱であり、 どうしても体温が足りないというときには、ぶるっ!と震えて自動的に熱を作り出す仕組み(シバリング)があります。
「酸素」について
「このお部屋、人数が多くて酸素濃度が薄いから30 分くらい呼吸を止めてくださいね。」とは できませんし、「呼吸をするのも忘れて、夢中になりましたよ。」が本当だったら怖いです。冗談は置いておいて、「酸素」の取り込みは、時間的なゆとりも、貯めておいたところからの貸し借りもできないため、迅速なアセスメントが必要となります。
「息苦しい」という表現について
さて、身体には60 兆個の細胞があります。ここにリアルタイムで酸素を届けるには、仕入れと運搬と運搬道具が不可欠です。
(仕入れ:呼吸器系 / 運搬:循環器 / 運搬道具:ヘモグロビン)
これらのどれが足りなくても「息苦しい」と表出されます。なぜなら、「血薄苦しい・・・」「心臓弱苦しい・・・」という訴えは、できません。自分の身体のこととはいえ、当の本人だってどんな理由で息苦しいかが分かる術はありません。
つまり『息苦しい』=呼吸器疾患(仕入れ)の問題と決めつけてしまうことは危険です。 循環に問題はないか?そもそも貧血ではないか? と、多方面から観察をする必要があります。
だから「循環」のアセスメントの最初の設問が「呼吸は・・・?」になります。