介護業界で現在、急務とされているのが業務改善への取り組みです。

業務内容が改善されないと、早期離職率の増加やコミュニケーション不足など、さまざまな問題が浮上する可能性があるため、然るべき対策を講じることをおすすめします。
本記事では介護業界における業務改善の必要性や、業務改善に取り組むメリット、具体的な改善方法、改善のアイデアについて解説します。

介護業界で業務改善が求められている理由

介護業界で今、業務改善が求められている理由は大きく分けて2つあります。

1つは圧倒的な人材不足です。少子高齢化が進む現代日本では、介護を必要とする高齢者が増え続ける一方、労働生産人口は減少傾向にあります。
需要に対して供給が追いついていない状態なので、業務改善によって労働生産性を向上し、人手不足を補う取り組みが求められています。

2つ目は働き方改革にともなう労働環境の変化です。大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から、それぞれ時間外労働の上限規制が適用され、原則として月45時間・年360時間までしか時間外労働が認められなくなりました。[注1]
介護業界ではこれまで、残業や休日出勤で人手不足を補ってきた側面があります。そのため、働き方改革によって早急な労働環境および業務の改善が求められています。

[注1]厚生労働省:時間外労働の上限規制わかりやすい解説 P3
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf

介護業界の業務改善を実施するメリット

介護業界の業務改善に取り組むと、以下のようなメリットを期待できます。

離職率の低減

介護業界の離職率は他の産業に比べてやや高い水準となっており、2021年では産業全体の離職率が13.9%[注2]であるのに対し、介護業界は14.3%[注3]となっています。
ピーク時の20%超に比べると多少減少傾向にあります。しかし、需要と供給のバランスの面で課題を抱える介護業界にとって、離職率の高さは優先的に解決すべき問題です。
業務改善を行うと、業務効率化による仕事負担の軽減、残業や休日出勤の減少などにより、従業員にとって働きやすい環境が整います。労働環境が改善されると従業員のモチベーションも向上し、離職率の低減につながります。

[注2]厚生労働省:令和3年雇用動向調査結果の概要 入職と離職の推移 p1
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/22-2/dl/kekka_gaiyo-01.pdf
[注3]公益財団法人 介護労働安定センター:令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要について p2
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2022r01_chousa_kekka_gaiyou_0822.pdf

コミュニケーションの活性化

介護業界に限らず、職場の悩みとして挙げられることが多いのが人間関係です。
「職場になじめない」「わからないことがあっても相談できない雰囲気である」など、職場の人間関係に不安や不満を感じていると、モチベーション低下や早期離職の原因となります。

業務改善の一環として、従業員同士がコミュニケーションを取りやすい環境を整備すれば、人間関係の悩みの解消に役立ちます。
また、コミュニケーションが活性化することにより、業務効率に関するアイデアが出やすくなる点もメリットです。従業員同士で連携を取りやすくなり、チーム単位や部署単位で効率よく動けるようになる効果も見込めます。

顧客満足度の向上

介護業界で業務効率化が進むと、事業所側だけでなく、利用者にも大きなメリットがあります。例えば、これまで人手不足で手が回らず、サービス提供に遅延が発生していた場合、業務効率化によってすばやいケアが可能です。
また、浮いた時間を利用者一人ひとりのきめ細かなケアに費やせば、顧客満足度が向上します。利用者本人はもちろん、その家族やケアマネジャーからも高い評価を得られる可能性があるでしょう。
優良な介護事業所は利用者に選ばれる事業所となり、経営の安定性や業績アップなどのメリットを期待できます。

介護業界の業務改善に取り組む方法

介護業界における業務改善の具体的な取り組み方法を4つのポイントに分けて解説します。

施設の現状を把握し、課題や問題点を洗い出す

介護事業所が抱える課題や問題は施設によってまちまちで、コミュニケーション不足に悩んでいる事業所もあれば、時間外労働の常態化が課題になっている事業所もあります。
どのような課題・問題点を抱えているのかを洗い出すために、まずは事業所の現状を把握するところから始めましょう。

具体的には、以下のような情報・データを収集・分析します。

  • ワークフローや業務の内容
  • 業務に充てる時間や労働力
  • 事務連絡の方法
  • 入所者のデータの活用度

また、職場でアンケートや意識調査などを実施し、不満や悩みはないかどうかチェックするのも有効な手段の一つです。

改善方法を検討、実行計画をたてる

事業所の課題や問題点を洗い出したら、それを基に改善方法を検討します。
課題や問題点が明確になれば、解決方法を見出しやすくなります。しかし、設備や予算などの問題でなかなか実行に移せないものも珍しくありません。
改善方法をいくつか出してみて、その中から実行可能なものをピックアップし、具体的な計画へとつなげていくのが重要なポイントです。
実行計画を立てる際は、従業員の声にもきちんと耳を傾け、現場のニーズに適したアイデアや工夫を採り入れるようにしましょう。

業務改善を実行する

業務改善方法がまとまったら、実行計画に沿って取り組みを開始します。
課題や問題が複数ある場合、実行計画も多岐にわたります。そのため、一度に全てを実行しようとすると現場が混乱するおそれもあるでしょう。
現場へのスムーズな導入を実現するためにも、実行する施策はなるべく規模が小さく、かつ一定の効果が見込めるものからスタートした方がよいでしょう。

先行した施策が成功すれば、従業員のモチベーションもアップし、次の施策の成功率向上につながります。

なお、規模の小さい施策であれば、並行して実施してもOKです。特に数が多い場合、1つずつこなしていこうとすると多大な時間がかかってしまうため、同時に実行した方が効率的です。

振り返り、改善をおこなう

業務改善の施策を実行したら、振り返りを行います。
例えば、当初の計画通りに実行できたか、どのくらいの成果が出たか、実行にあたって問題やトラブルが生じなかったかなどです。

思ったような成果が出なかった場合や、想定外の問題が発生した場合は、施策自体の見直しを行う必要があります。
成功に終わった施策についても、ブラッシュアップすればより大きな効果を生み出す可能性があります。現状に満足せず、常にPlan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)のサイクルを回していくことが大切です。

介護業界の業務改善に取り組む際のアイデア

介護業界の業務改善に取り組む際の具体的なアイデアを5つご紹介します。

職場環境の整備

職場環境が整っていないと、必要なものがどこにあるかわからない、施設内が散らかっていて安全面に問題がある、などの問題が生じやすくなります。
職場環境という土台が整っていないと、業務改善を目指す際に支障を来しかねません。5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を徹底し、働くのに適した環境づくりを意識しましょう。
具体的には、必要なものと不要なものを仕分けして不用品は処分する、物の位置や常備数を決める、こまめに清掃して清潔な状態をキープするなどです。

なお、他の4S活動(整理・整頓・清掃・清潔)を維持するには、ルールを守り、習慣化するしつけが必要不可欠です。
就業規則やマニュアルなどを作成し、従業員の見えるところに備え付けるなどして、全員でよりよい職場環境づくりに取り組む体制を整えましょう。

業務フローの見直し(業務の標準化・手順書の作成について)

日頃の業務フローを確認すると、無理・無駄・ムラのある工程が見えてくることがあります。
本来は必要ないのに何となく行っている工程や、作業を行う人材によって成果にムラが出る工程などが見つかったら、思い切って工程を削減する、内容を改善するなどの措置を行いましょう。
また、作業担当者のスキルや経験度なども考慮し、無理のないワークフローになっているかどうかも確認することが大切です。
業務フローが定型化されていない場合は、この機会に業務の標準化を行い、マニュアルを作成します。手順が画一化されれば、担当者によるムラが出にくくなり、安定したサービスを提供できるようになります。

記録や書類の電子化

介護事業所ではケアプランや介護計画書、介護記録といった介護業務書類の他に、シフト表や従業員への連絡をはじめとした中間管理書類など、さまざまな書類を扱っています。
目当ての書類を探し出すのは手間と時間がかかる上、大量の紙は職場環境が散らかる原因にもなります。

記録や書類を電子データ化すれば、システムの検索機能で目当てのデータをすばやく閲覧でき、紙を物理的に保管する必要もありません。
業務負担の低減につながるのはもちろん、施設の省スペース化にも役立つため、一石二鳥の効果が狙えます。

情報共有の効率化

介護現場では、従業員同士の連携や協力が必要不可欠です。
引き継ぎのときなどに情報共有が効率化されていないと、伝達漏れや伝達ミスなどが発生する原因となります。
クラウドシステムを導入するなど、リアルタイムで情報共有できる環境を整えれば、対面や紙面でやり取りする必要がなくなります。そのため、結果的に業務の効率化へとつながるでしょう。

なお、クラウドシステムの中には単にデータをやり取りするだけでなく、従業員間でメッセージなどをやり取りできる機能が具わっているものもあります。
こうした機能を普段から活用すれば、コミュニケーションの活性化にも役立つでしょう。

ICTツールの導入

ICTツールの導入は、人手不足を解消する手段として非常に有効です。
先に説明した情報共有システムを始め、スマートフォンを使った勤怠管理や利用者の状態や活動を追跡できる見守りセンサーなどを導入すれば、アナログ作業の自動化や、人の介入率の減少などを実現できます。
ICTツールは業務効率化のみならず、顧客満足度の向上にもつながる便利なツールなので、事業所が抱える問題や課題などに適したツールの導入を検討してみるとよいでしょう。

【まとめ】

介護業界で業務改善に取り組み、課題や問題を解決しよう

介護業界では慢性的に人手不足の問題を抱えており、需要に対して十分に供給できていない状況にあります。
そのぶん、現場は苛酷な状態となっており、早期離職や顧客満足度の低下など、さまざまな問題を抱えています。
少子高齢化が加速化している現代日本では、今後ますます介護ニーズが高まると予想されていますので、業務改善に取り組み、現在抱えている問題や課題の解決を目指しましょう。
介護業界の業務改善にはさまざまな方法があり、特にアナログ作業の手間と時間を削減できるICTツールの導入は大きな効果を見込めます。
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また、同じセントケア・グループ開発のソフト「コネクトケア」は、これまで手作業で行ってきたアナログ業務を手軽にICT化することが可能です。
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