科学的介護とは何か?
介護現場は高齢者の人口の増減に対して働き手が足りないという慢性的な人材不足の問題を抱えています。さらに、介護に携わる人の経験や知識、感覚に頼る部分が多く、お客様の健康状態や食事量などの判断にその経験を活用してきましたが、これらの経験に頼る介護方法では、今後十分なサービスが維持できなくなる可能性があります。そこで注目されたのが、科学的根拠に基づく科学的介護です。経験ではなくエビデンスに基づく科学的介護であれば、介護従事者のスキルに左右されることのない質の良いサービスを提供することができます。またお客様にとっても自分に適したサービスの判断材料となり、蓄積されたデータはADL・QOLの維持向上の効果に期待できるようになります。
科学的介護情報システム「LIFE」とは何か?
「LIFE」は、お客様の状態(アセスメント情報やケアの実績内容)をインターネットを介して厚生労働省へ送信すると、分析された内容がフィードバックされる情報システムです。現場ではその情報をもとに、計画書などを改善し、さらなるプランを作成、そのプランに基づいたサービスを提供します。このフィードバックに基づいて、PDCAサイクルを回していきます。
科学的介護を推進する「科学的介護推進体制加算」について
科学的介護推進体制加算(LIFE加算)とは、LIFEへ情報提供をした事業所に対して加算を行う制度のことです。LIFEの利用率を増加させ科学的介護を推進する目的で、令和3年度の介護報酬改定において新たに創設されました。科学的介護推進体制加算(LIFE加算)の対象になるには、定められた単位数や算定要件を満たし利用申請をする必要があります。
対象サービス
- 通所介護
- 通所リハビリテーション
- 認知症対応型通所介護
- 地域密着型通所介護
- 特定施設入居者生活介護
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 認知症対応型共同生活介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 看護小規模多機能型居宅介護
加算単位と算定要件
40単位/月
- 利用者ごとのADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況やその他の入所者の心身の状況等に係る基本的な情報を厚生労働省に提出していること。
- 必要に応じてサービス計画を見直すなど、サービスの提供にあたり上記の情報その他サービスを適切且つ有効に提供するために必要な情報を活用していること。
科学的介護情報システム(LIFE)の活用が要件として含まれる加算と報酬単位
- 個別機能訓練加算(Ⅱ)
20単位/月 ※個別機能訓練加算(Ⅰ)に上乗せして算定
利用者の生活機能(身体機能を含む)の維持・向上を図り、評価・計画・訓練を提供することにより算定できる個別機能訓練加算(Ⅰ)に、LIFEを活用することで上乗せして算定できる加算 - ADL維持等加算(Ⅰ)(Ⅱ)
(Ⅰ) 30単位/月、 (Ⅱ) 60単位/月 ※ADL利得の平均値が2以上であれば(Ⅱ)の算定が可能
利用者の自立支援や重度化防止を目的に、日常生活動作(ADL)の機能を維持、向上するサービスを提供した事業者を評価する加算 - リハビリテーションマネジメント加算(A)ロ、(B)ロ
(A)ロ 213単位/月、 (B)ロ 483単位/月
利用者の状態や生活環境等を踏まえた計画の作成、適切なリハビリテーションの実施、評価、計画の見直しを行い、質の高いリハビリテーションを提供することを評価するリハビリテーションマネジメント加算(A)イ、(B)イの算定要件を満たし、LIFEを活用することで算定できる加算 - 栄養アセスメント加算
50単位/月
栄養改善が必要な者を的確に把握し、適切なサービスにつなげていくことを目的とし、管理栄養士と介護職員等の連携による栄養アセスメントの取り組みを評価する加算 - 口腔機能向上加算(Ⅱ)
160単位/回(月2回を限度)
口腔機能の低下している者やそのおそれのある者を対象に、要介護状態への重度化防止や要支援状態からの改善を目指したサービスを提供した場合に算定できる口腔機能向上加算(Ⅰ)の算定要件を満たし、LIFEを活用することで算定できる加算 - 褥瘡マネジメント加算(Ⅰ)、(Ⅱ)
(Ⅰ) 3単位/月、 (Ⅱ) 13単位/月
褥瘡ケア計画を作成し、定期的に利用者の褥瘡の管理と治療を行う事業所を評価する加算 - 排せつ支援加算(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ)
(Ⅰ) 10単位/月、 (Ⅱ) 15単位/月、 (Ⅲ) 20単位/月
排せつ障害等がある入所者に対し、多職種が協働して支援計画を作成し、その計画に基づき支援することを評価する加算
まとめ
フィードバックの情報では、加算種別ごとの全国の集計値や分布を確認することができます。全国平均値と、自分の事業所・施設の数値を比較することによって、現状との比較が可能になります。現場で情報共有し、その原因を検討し、改善に向けて計画を見直すことで、サービスの質の向上へとつなげることができる一つの手段かもしれません。