介護事業所におけるハラスメントの現状は・・・
~こんな職場でパワハラは蔓延する~
長時間労働で社員が疲弊している職場ほどパワーハラスメント(以下パワハラ)は起こりやすいと言われます。パワハラを受けた職員はメンタルが不調となり、休職に追い込まれ、最悪の場合は自ら命を絶ってしまうケースもあります。
「パワハラ」という言葉が一般化したのは、ここ5~6年のことではないでしょうか。最近では、部下を注意するとすぐに「パワハラです」と言われることに神経質になりすぎて、部下に対して思うように注意指導が出来なくなったという声が多く聞かれます。その結果、職場のモラルが低下し、職員が離職していくという負の連鎖を招くことになります。
介護現場を見ると、人材不足に起因している部分もあるかもしれませんが、パワハラやいじめ・嫌がらせの問題は年々数が増え、現場責任者からスタッフへのパワハラ、スタッフ間のいじめ、嫌がらせなど、深刻化も進んでいます。
全国の労働局に寄せられる労働相談は年々、増加しており、過去3年間に1件以上パワーハラスメントに該当する相談を受けたと回答した企業は36.3%、過去3年間にパワハラを受けたことがあると回答した従業員は32.5%(約3人に1人の割合)に達しています。
企業には、社員の安全を配慮する義務があります。パワハラなどのハラスメントの放置は職場風土を悪化させ、職員の離職に直結します。働きやすい職場のためには、パワハラとは何かを理解し、社内ルールや予防措置を講じていく必要があります。
パワハラが起こりやすい職場
上記からわかるように、パワハラが起こりやすい職場とは、部下から上司に対してコミュニケーションが取りにくい職場です。裏を返せば、上司から部下への一方通行のコミュニケーションになっており、本来の双方コミュニケーションにはなっていないということです。そういう職場で、パワハラが起こっていることが読み取れます。
そして、パワハラが起こると、益々コミュニケーションが減り、上司に話しかけにくくなります。つまり情報が上司に上がっていかなくなることを意味しています。
パワハラによって生じるダメージ
個人のダメージ
- 健康状態の悪化
- 労働意欲の低下
- 就業環境の悪化
- 休職や退職につながり得ること
職場のダメージ
- 就業環境の悪化
- 職場全体の生産性低下
組織全体のダメージ
- 人材採用難
- SNS、企業名公表、風評低下
- 信用喪失
- 訴訟、損害賠償
パワハラ予防に必要な4つのポイント
行為者を生まないためのアプローチ
ハラスメント研修などによる「指導・教育」と「パワハラ」の違いを理解することです。
パワハラをしてしまう方のほとんどは自分がパワハラ行為を行っている自覚がありません。従って、パワハラとはそもそもどの様な言動を指すのか、「指導」「パワハラ」との違いを理解しておく必要があります。なぜなら、「自分は指導を行っただけだ」という主張がとても多いからです。
被害の深刻化を防ぐアプローチ
研修などを通じて被害者への対応として「相談先」や「相談の仕方」を伝え、早めの相談をしてもらうことを促します。相談窓口を事前に決めておくことは極めて重要です。
職場環境の改善アプローチ
「見て見ぬふり」をしないこと。職場で働く全員が、ハラスメントらしき言動を知ったら、見たら、「見て見ぬふりをしない」で、なんらかの行動をおこすこと。②同様に周りの同僚の理解と行動がとても重要です。
社内ルールの整備
就業規則を使ってパワハラ定義と禁止を規定すること。
明確なパワハラに該当しなくても「会社の名誉と信頼を損なう行為」や「従業員としてふさわしくない行為」に該当する場合には、懲戒対象となります。言い換えれば、パワハラ認定が無くても明らかに不適切な言動があれば、懲戒処分されることはありうるということ。例えば、上司の暴言が録音されていたとしましょう。
総合的に見てパワハラとは言えないと判断されても、暴言そのものが「社員としてふさわしくない行為」に該当すれば処分されることはあり得ます。
つまり、パワハラの境界線を踏み越えなくても、処分は在りうるということなのでその点を十分に認識して上司は日頃の指導を行う必要があります。
まとめ
- 厚労省のデータでは、一般従業員の3人に1人がパワハラを受けた経験があるという結果で、どこの職場でもパワハラは身近のものとなっている。
- パワハラの起こりやすい職場はコミュニケーションがとりづらい職場が多く、人手不足で現場が疲弊している職場でそのような傾向が強い。
- パワハラ予防の4つのポイント
- 研修等を受けてパワハラに関する知識を深めること。
- 相談窓口を決めて職員に周知をすること。
- 職場の皆がパワハラの知識をもち、職場の皆が「見て見ぬふりをしないで、行動を起こすこと」
- 発生した場合の職場のルール(懲戒処分など)を事前に決めておくこと。
※上記コラムは、コンフォーム・パッケージ内セミナーで講師としておなじみの、社労士法人ヒューマンスキルコンサルティング代表林正人氏によるコラムになります。