2023年4月より、従業員1000名以上の大企業は男性育休取得率の公表(年1回)が義務化となります。
育休取得率の算出方法、公表方法、そして後半は人材戦略としてのヒントもご案内します。
対象は従業員1,000名以上の企業・組織となっていますが、採用活動、人材定着、企業ブランディングなどを考えると、対象でない企業・組織も育休取得率を公表、又はいつでも公表できる準備をしていくことが得策でしょう。ぜひ従業員1,000名未満のご担当者もご覧ください。
育休取得率公表の対象者と算出方法
育休取得率公表の対象者
対象は、「常時雇用する労働者」です。
具体的には次のいずれかに当てはまる者です。
- 期間の定めなく雇用されている者
- 過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者、又は雇用入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者
育休取得率の算出方法
育休取得率の算出方法は下記の2種類あります。
- 男性の育児休業等の取得率
わかりやすくお伝えすると下記になります。
男性従業員の育児休業取得者数/配偶者が出産した男性従業員数
こちらは法律で定められた育児休業(産後パパ育休を含む)を取得した従業員のみでの算出方法です。
厚生労働省には次のように案内されています。
雇用する男性労働者であって、公表前事業年度において配偶者が出産したものの数に対する、その雇用する男性労働者であって公表前事業年度において育児休業等をしたものの数の割合。 - 育児休業等と育児目的休暇の取得率
わかりやすくお伝えすると下記になります。
男性従業員の育児休業取得者数(会社独自の制度を含む)/配偶者が出産した男性従業員数
②は、①に加えて、会社独自の育児休業、育児休暇なども含めた取得率となります。
例えば、出産時休暇として産後5日間を有給休暇で休むことが出来る場合や、消化しきれない有給休暇を出産時に利用できる休暇として通常の有給休暇とは別で利用できる制度がある場合です。(通常の有給休暇を利用する場合はこちらには当てはまりません。)
厚生労働省には次のように案内されています。
雇用する男性労働者であって公表前事業年度において配偶者が出産したものの数に対する、その雇用する男性労働者であって公表前事業年度において育児休業等をしたものの数及び小学校就学の始期に達するまでの子を養育する男性労働者を雇用する事業主が講ずる育児を目的とした休暇制度を利用したものの数の割合。(育児休業等及び子の看護休暇を除く。)
育休取得率算出に関するQ&A
男性育休取得率の公表に向けて実際に準備をしていくと、様々な疑問が出てきます。
ここでは細かな点についてQ&A方式でご案内します。
Q.産後パパ育休の扱いは?
A.育児休業取得率は、産後パパ育休と育児休業のどちらも含みます。
Q.1人のお子さんについてある従業員が複数回取得した場合は?
A.1人のお子さんについて複数回取得した場合、取得した人数は1人で計算します。
2回取得しても取得者数は2にはなりません。
Q.事業年度をまたいで育児休業を取得している場合は?
A.育児休業を開始した日にちの事業年度にて1回だけ計上します。
(複数の事業年度に計上はしません)
Q.育休取得率、小数点以下(端数)はどのように計算する?
A.育休取得率を算出する時は、少数第一以下を切り捨てます。
Q.育休取得対象者が0の場合は?
A.育休取得対象者が0の場合は、取得率の計算が出来ないため「―」と表記します。
育休取得率の公表について
育休取得率の公表方法
厚生労働省の資料には、「インターネットの利用その他適切な方法で、一般の方が閲覧できるように公表してください。」とあります。
具体的には、自社のホームページや厚生労働省の「両立支援のひろば」を指しています。
自社のホームぺージとはどこに掲載すればよいでしょう? 例えば「会社紹介」に掲載することも考えられますし、「働き方改革」「ワーク・ライフバランス推進」「ダイバーシティ推進」「両立支援」などに関するページがある場合はそちらへ掲載もよいでしょう。
男性育休取得率の公表を人材戦略として考える
男性育休取得率の公表を人材戦略で考えると、男性育休推進を自社の魅力としてアピールしていきたいところです。
最近は、大学生も転職される方も「仕事と私生活を両立できる職場」を重視する人が増えており、そのひとつとして男性育休取得率はわかりやすい項目です。つまり、男性育休を取得しやすい職場であることを上手にアピールできれば、採用活動が有利になります。
そのように考えると、男性育休取得率は求人サイトや会社説明資料にもぜひ掲載していきたいところです。
掲載する内容は、男性育休取得率に加えて、取得期間や取得者の声なども掲載できると、求職者に好印象を与えることができるでしょう。
最近は、求人票にコストをかければ採用できるという時代ではなくなってきています。働きやすい職場作りを進めることで、結果、優秀な人材を獲得できることに繋がっていきます。
重要なのは ”他社との差別化” です。
育休取得率に加えて、例えば、方針の表明、研修の実施、座談会の実施、男性向け育休ハンドブックの作成、コミュニティ作り、育休取得事例の共有など、取り組んでいることがあれば掲載していくのもよいでしょう。
もし掲載出来ることがまだない企業・組織は、採用と定着に向けた重要な人材戦略として社内で共通認識を持つ場を作り、何をいつ、どのように取り組んでいくのか、具体的にスケジュールを立ていくとよいでしょう。
男性育休取得率向上に向けて取り組む施策
まだ男性育休を取りやすい職場とは言えない、取得率は上がってきたが取得期間が短い、などの職場の場合は、次のような施策を着々と進めていきましょう。
- 男性育休取得促進に関する方針の表明
経営層や人事部などからメッセージの発信、育休取得率の目標設定。 - 従業員の男性育休の理解を進める
管理職、取得対象者などへ研修等の実施。研修内容は、男性育休が必要な背景、リアルな育休体験談、チームマネジメントなども組み込むと理解が得られやすいです。法改正の説明だけでは、「そうはいっても現場は難しい」の域を抜けられず、推進には繋がらない可能性がありますので注意です。 - 男性育休を取得しやすい仕組みづくり
申請に関するフローを明確にする。取得面談シート、給与計算シート、引継ぎシートなどの作成。管理職や育休取得者が推進しやすい仕組みを進めましょう。 - 育休取得者が出ても業務がまわる職場作り
業務の平準化、権限移譲、お互い様で休暇取得できる職場作りをプロジェクト化して進める。現場に全てを委ねるのは負担が大きいかもしれません。会社としてプロジェクトを立て、一定のチームや部署で事例をつくり、社内に広げていくのもひとつの方法です。
上記は一例です。取り組みは各職場の状況に応じて進めていきましょう。
最後に
2023年4月からスタートする男性育休取得率の公表についてご案内してきました。
男性育休は取り組みを進めてすぐに成果がでるわけではありません。
取得率が上がるのは取り組みを始めてから1~2年後です。
つまり少しでも早く取り組みを進めた企業・組織が有利になります。
男性育休に関する制度があっても、従業員がその必要性を理解していなければ男性育休を取得しやすい風土にはなりません。
まずは、自社はなぜ男性育休を勧めていくの?を経営層や管理部門はもちろん、管理職や一般社員に理解を進めていくことが重要と考えられます。
なぜ男性育休が必要?について職場の理解を進めたい企業・組織には、必要な人が適切なタイミングで受講出来る男性育休eラーニング研修『ワーク・ライフバランスeまなび』がお勧めです。
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